白い林檎、硝子のスープ

読書・ゲームなどの感想を書いていくです

moon 感想

 

 

 非常にPS1らしいゲームであり、なかなか評価しづらいゲームだった。

 思っていたよりメタRPGとしての要素は薄く、どちらかというとそれを描こうとしたが、残酷になりきれず、あえて描くのをやめた印象を受けた。それがいいという人もいれば、中途半端だと言うこともできるだろう。そういう意味で非常に批評ばえするゲームなのは確かである。

 だがあえて、ゲームとしての面白さについてみてみよう。思った以上にゲームとして面白いのだ。

 自律行動するキャラクターのなかで、様々なイベントが発生する。近年のゲームと大きく違うのはそれらに対してプレイヤーがかなり能動的にならないと反応が返ってこない点。

 この反応の具合やラブの手に入れ方が非常に多彩で、試行錯誤がとても楽しい。また、反応=個性的なキャラクターたちを過不足なく描くテキストが非常に秀逸。ただ漫然とながめているだけでは何もわからないが、行動を起こせばきちんとそれに見合うヒントや回答が返ってきて、自分のペースで世界を読みとけるようになっている。

 この自分のペースをつかめなかったり、目的意識を持ってゲームをしてしまうと、moonの良さは感じられないかもしれない。個人的には序盤の時間のタイトさとやれることの多さ、イベントを達成すればするほど加速度的に世界が広がっていく感じが、ちょうどいいバランスだと感じた。
 ラストは多分そこまで深い意味はないんだけれど、ラストに至る過程でラブを見いだせるかどうかがこのゲームが心に残るか残らないかの違いだろう。

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 プレミアムエディションは補完としてファンアイテムとしてたしかなまんぞくがある。あるんだけど、それ以上に物語の空白を完璧に埋めているので間違いなくCDは聞くべきである。

 音だけで表現された「あの少年」の物語は、とくにクリア直後だと想像以上にクルものがあってつらい。

 そしてこのCDを聞くことでmoonの物語ははっきりと構造が提示されて、思ったよりメタ要素が強かったんだなぁと印象を改めることになった。ラストの選択にとても強い意味が付与されるというか、もともと「もう勇者しない」にこういう意図が含まれていたのだとすると、非常によく考えられた作品である。

 

良作でしたね。期待に十分応えてくれました。