白い林檎、硝子のスープ

読書・ゲームなどの感想を書いていくです

ふちなしのかがみ 辻村深月

ふちなしのかがみ

ふちなしのかがみ


<踊り場の花子>
 いちばんホラーらしいホラー。一人称がぶれないのはいいこと。ただ、あの真相ならもっと一人称を巧みに使えたらいいのに、と思う。花子さんのアレンジとしては非常に良質。伏線は張ってないけど、なるほどなぁと思わせる真相は上手い。ただし、妥当ではあっても素晴らしくはない。今までの作品から伏線を抜いたからってすぐにホラーになるとは思わない方がいいと思う。

<ブランコをこぐ足>
 結局これが一番分からない。コックリさんアレンジはいろんな作家がやってるよね。比較的ありがちではある気がした。視点がいろいろ変わるのはいいんだけどそれ以上でもそれ以下でもない。上手く使えばラストが怖いんだろうけど、こういう感じの書き方にしたのなら「ジョジョに怖さが浮き彫りになっていく」感じを出した方がよかったんじゃあないだろうか。

<おとうさん、したいがあるよ>
 雰囲気といい設定といい、作者にしては斬新、新鮮で個人的にはすごく好き。だが、なんと言ってもこういう系列の話は恒川光太郎という第一人者(?)がいるから比較せざるをえなくなる。そうすると少し物足りないと感じる。ふわふわっとした世界観、すごく人間味のない一人称など、すごく面白いネタを使っているにもかかわらずどうしてもそれを物語に結び付けられなかったのが痛い。一番の問題がオチをつけなかったことだろうか。
 けなしてはみたが、やっぱりこの本の中では一番好き。もうなんというか主人公最高すぎる。まあ、恩田陸で投げっぱエンドには慣れてるからなぁ。

<ふちなしのかがみ>
 最も作者らしい作品。大好きな例のあのネタを使ってるし、比較的怖いし。やっぱこういう伏線が生きてくる作品が面白い。だが、実際のところ今までのこれ系とどう違うの、といわれるとちょっと……という感じがする。良くも悪くも「らしい」。けど例の如く作者の主観が混じってるのが少し惜しいかな。

<八月の天変地異>
 タイトルからなんとなく「曜変天目の夜」を連想した。中身は全然違った。
 物語としてありがちな感動話に辻村さんの学校観というかなんというか、この人らしい学校が融合して不思議なタッチの作品になっている。物語としては確かに面白いし、わかりやすい。だけど、何のひねりもなくこの程度で感動させようってのは甘すぎる。いい話を期待してるわけじゃないんだ。ロードムービーの時も思ったが、こういうの面白くない。どうも変な部分に期待しすぎてるのかなぁ。



全体的にはまとまりがない印象。ひとつひとつにいいところはあるんだけど、まとまりないなぁ。最初の二つと表題作は怪談アレンジ、でいいんだろうけどしたいがある、は異質すぎるし八月はいらないなぁ。

評価:3~4