白い林檎、硝子のスープ

読書・ゲームなどの感想を書いていくです

小説の技巧、廃墟建築士、麗しのオルタンス

<小説の技巧 デイヴィット・ロッジ>

小説の技巧

小説の技巧


 技巧、とあるものの、小説を書く上での技法ではなく、小説を読む上で知っておくべき技法を挙げて解説している。英米文学に関してある程度の知識があることが望ましいが、なくてもテクストは抜粋されているので問題はない。
 いわゆるハウツー本ではなく、本格的な文学批評の初心者版という感じなので、非常に興味深い内容だった。


<廃墟建築士 三崎亜記

廃墟建築士

廃墟建築士


 基本的にこの人の作品は正当に評価されていない気がする。確かに「となり町戦争」は微妙だった。ただ、この人の着眼点がものすごくユニークで、面白いのは確か。だから個人的にはこの人は中編がうまい作家だと思っている。長編だとボロが出る。
 それほどうまい作家ではないと思うのです。作家としての力量はもう限界でしょう。この中編集にある作品も着想が面白いだけで、それを調理できていない。基本的にほとんど同じパターンだし、ストーリーはほとんど面白くない。
 だからこの人は発想の豊かさを武器にして、安定して「ある程度面白い」作品を量産するのが一番いいと思います。変に欲を出すとろくな目に合わない気がする。僕はこの中編集楽しめた。この人はたぶん自分が作った奇抜な設定を説明するのが大好きなんだと思います。だからその設定説明のところは楽しいんです。うん。うん。


<麗しのオルタンス ジャック・ルーボー>

麗しのオルタンス (創元推理文庫)

麗しのオルタンス (創元推理文庫)


 そもそもフランス文学は実験小説が多いということは文学史をある程度かじっていればわかるわけです。結局その系統の小説なんですよね。読者を馬鹿にするための小説。人を食った小説。面白いと思うかはほんとに人によると思うけど、とりあえず図書館のくだりはだれでも面白いと思うだろう。とにかく全編通して馬鹿馬鹿しい。パンツはいてない美少女が主人公として登場したり肝心の事件がそもそも本筋に絡んでこなかったりもはや作者がでしゃばり過ぎてうざかったり。でも、ほんとに馬鹿馬鹿しくて面白かった。悔しいんだけど、作者が楽しそうで楽しい。