ルートレター 感想と若干の考察
カリギュラもルフランも面白いすぎるので、さらに存在感が消滅しそうなルートレターさんのレビュー、というか供養をしたいと思います。
★数多くの問題点が絡まりあって、一周回ってバカゲーっぽく見えてくる。
登場人物たちがことごとく始末に負えない奴らで、そいつらをさらに上回る強烈なクズである主人公が彼らの安寧をぶち壊していく物語は、正直嫌いではなかった。
あだ名のわりにその場その場のちょっと考えちゃった系台詞がたまらなく楽しいです。
★ 主人公がクズであること
割とわかりやすくクズでひどいけれども、ある意味このキャラクター性が強すぎるがゆえに、バカゲーとして楽しめなくもない。
というか、中盤までとにかくひどすぎるせいで慣れてくる後半は割とマックスを他人のように軽蔑しながら見ることができるので非常に楽しい。
とまあいくつかスクショを提示したものの、実は割とこの点はどうでもよい。ある意味わかりやすい欠点でありながら、というか、バカゲー要素としては最大の長所です。どのセリフもあまりにバカバカしくて逆にありかなって気分になってくる。相手の反応が中盤以降どんどん雑になっていき、傷のつけ方もバカっぽくなっていくのはおそらくわざとであろう。とくにマックスモードの謎ノリはところどころ恐ろしく楽しくなっていく。
それに全編プレイするとなんとなくこういう人物にした理由がわかってくる。このことは後述しよう。まずはとりあえず、ゲームとしての問題点を挙げていこう。
★選択式の意味がまったくない
古き良きコマンド選択型のゲームなのだが、そうした意味がまったくなく、しかもむしろゲームの進行を阻害する要素にしかなってない。
基本的に一本道で、分岐はなにもなく、正解のコマンド以外を選んでも特に何も起こらない。
イベントでは逆に正解の選択肢以外は先へ進まないし、正解が分かりづらい。正解の選択肢を選ぶと別の選択肢はもう選べない。
正解ではない場所に行っても、それこそ直前まで話していた人物すらいなく、何らかの会話が起こることは2週目のイベント以外まったくない。
どの場所も調べることができ、美麗な背景は素晴らしいが、調べてもぜんっぜん面白くない。
万事が万事こんな感じである。
また、終盤になるとマップには大量のあいうえお順の目的地が示されるであるとか、
隣にできたのに隣じゃなかったりする
(DVD店は京店商店街にある。時空がゆがんでいる)
のは別にどうでもいいですね。
出雲市にUFO研究所しかないのもどうでもいいです。
★特に意味のない動きまで無駄に描写される無駄さ
これでなんか別のところで証拠探さないといけないのかなーと思っていたら
これである。せめてその5分でなんかイベントつけるべきでしょう。
こういった特に意味がないイベントが割とよくあるのがこのゲームの特徴でもある。悪い意味で。
おそらく伏線だけ作っといて使えたら使う、使えなかったらまあいいやな書きかたをしたのでしょうが、そういうのはよくないですよねえ。
これも特に意味はない。ほかのルートでなんかあるのかと思ってたけど何もない。
★唐突に始まる宣伝モードは不自然で、そして物語は断絶する
島根のためとはいえ、幾度となくお土産を買い、いろんな説明を聞くことになる。
それだけなら正直許容範囲だし、これだけきれいな背景なんだから地元アピールはするべきだと思う。しかし、上のスクショのようにメインストーリーを断ち切るようにして唐突にイベントが挿入され、何の脈絡もなくお土産を手に入れ、それが後で役に立つということが割とよくある。
でもそれならまだいいほうかもしれない。
わざわざ人の弱みに攻め込むための道具を準備していく鬼畜と化す主人公。バカゲーである。
前項や前々項の合わせ技もある。
「重要アイテムをほしければ七不思議を集めて教えろ」といわれ、とりあえず商店街で道を歩いている人に話しかける(選択肢が出るが特に意味はない)。基地外扱いされたりしながら
7つの七不思議を集めるため意味もなく市内を転々とする。
通行人に聞く→わかんない→通行人に聞く→わかんない→通行人に聞く→わかんない→おなかすいた
絶望である。
★あだ名が直截的過ぎて「子供の残酷さ」が出せていない
チビだのビッチだの、ただの悪口である。子供はそんな直截的な悪口ではなく、割と間接的、隠喩的なあだ名をつけるものではないだろうか。ハーフの子供→フィリピン、とか、鼻がでかくて赤い→ピエロ、黒人→クロとかそういう。一段階置くからこそ残酷な名前こそ、子供の残酷さだろう。ガリだけはよかったけど、それ以外が本当にひどいのは何とかしたほうが良かったと思う。
おそらく話の流れとして「特徴的な特徴を持つキャラクター」を配置して細かい部分まで構成してしまったがために変えるわけにもならなくなってしまったのでしょうが、ちょっとねえ。
★ゲームの都合につじつまを合わせようともしない雑なシナリオ
・7通目の手紙への返信として書いた質問に、5通目の手紙で返答してくるタイムトラベラー
・そもそも章ごとに一つ一つ手紙を読んでいく形式なのだが、まとめて手紙を読まない意味が分からない
・11年設計事務所に勤めていたのに小学生でもわかるような礼儀がない。
このようなことだけにとどまらず、全体を通してもう少し考えればいい進め方あるだろうという強引な進め方が多い。
なんとなく意図が分かるだけに、かえってライターのレベルの低さというか、雑さが際立ってしまうのがつらいところ。
イベントとイベントをつなぐのが超絶雑なのが致命的で、中盤で物語を流れで追うのはあきらめました。たとえばある章が始まると、前の章で聞いた妖怪について調べることになる。
なぜか土産屋の観光客に聞き込みをはじめる頭のおかしいマックス。
理不尽に怒られたりする。
私たちには見えない誰かに買っていく宣言をするマックス。
そして松江歴史館のシーンまではずっと妖怪について調べてたのに、尾行されていたので、
唐突に別の話題になる。しかもマスター=尾行者と唐突に気づく。伏線などない。
……この章酷いなー…。
さて、ここまで不満点を言ってきたが、基本はバカゲーである。スクショにピンと来たら、こういうノリがずーっと続くので、買ってもいいと思う。ただし、主人公がクズゆえの不快な行動は若干省いていますので注意を。
さてここからちょっとした考察をしてみましょう。若干のネタバレが入りますが、ネタバレなど特に意味のないゲームです。
◎主人公の暴走の理由
主人公ことマックスは、作中でめちゃくちゃ暴れまわり、さらに暴れまわったことを開き直ったり恐喝したりするけれども、さすがにどうにかしてる。どうしてこうなってしまったのか。
真EDで明かされる件を前提とすると「クラスメイト達は割とクズの集合体」で「現状に不満を持つ地方都市の燻る子供大人たち」である。
それを前提としてすべてのシナリオが描かれているため、主人公は彼らクズどもをあの手この手で攻め立てるわけだ。
ただ、プレイヤーはクラスメイト=クズという図式が描かれる前に主人公が暴れまわるのを見せつけられる。クラスメイトの言動はクズなのでだんだんと暴れまわられても抵抗がなくなってくるが、最初は不快を通り越して怒りすら覚えるレベルだ。
人物関係が最初から分かっている製作者側と、プレイヤー側との悲しいすれ違いなのである。プレイヤーに一切非がないので悲しくはないかもしれない。
・真EDを前提としてシナリオを書いてしまった
恐らくライターもこれに違和感があったのだろう。随所で主人公が頭のおかしい人物であり、めちゃくちゃ嫌われてることを示唆する描写を入れている。
これはかなり成功していて、主人公のマックスさをおかしいと思う自分はおかしくなかったんだ!とプレイヤーは救われた気分になる。
しかしライターはたぶんそこで満足あるいはあきらめてしまって、どんどん突き抜けていく。ディレクターとかもどんどんマヒしてきて、実はこれが面白いんじゃなかろうかと思い始める。逆に考えれば確かに面白いかもしれないと誰もが思いはじめ、低レベルな商品が完成する。
また、
・分岐できるようにつじつまを合わせたため、プロットで思っていたような展開にできない。
というのも挙げられる。かなりの数の意味深な描写はスルーされ、ルートが別だと人間関係すら変化する(あるルートでは親子関係だったり、死んでたり生きてたり)。ほかのゲームではわりと致命的だけど、このゲームだとたいしたことないように思えるのは怪我の功名?ですね。
◎台本モードの台本さは、かすかな抵抗か。
2週目に条件を達成するとみることのできる台本は、台本である。
ただただテキストファイルをぶっこんだだけのようで、章ごとの整合性すら取れていないこともある。
しかしこのモードの特筆すべき点は「本編では存在しない割と出来のいい描写が台本にはある」ことである。
あるルートの第9章分の台本にはなぜか第10章まで入っており、こちらのほうが出来がいい。もちろん第10章分の台本も別に存在し、内容はほぼ一緒だが出来の悪いものと出来のいいものを並行してみることができるのだ。
もちろんこの隠された10章の出来はかなり良い。本編で入ってたらがらりと雰囲気が変わっていたであろうミステリー的要素や、後味の悪さもかなり好みである。
本編でクソ極まりない300万円の横領をクラスメイト7人200万、マックス1人100万の割合で補てんして隠ぺいするシナリオも、
これが
こうなる。
台本のほうがいろいろとよくできてるのだ。
むなしいのは、どちらもクラスメイトはクズで、マックスざまぁwwwwという感想しか出てこない点。
悲しいかな、台本を見るほどやりこむ(1周すれば少し進めるだけみられるけど)プレイヤーはほとんどいないであろう。