白い林檎、硝子のスープ

読書・ゲームなどの感想を書いていくです

NieR Replicant クリア

 全てのエンディングをクリアしたので感想をば。

 最高! もうこの一言に尽きる気がする。音楽は最高、物語も最高、切なさ最高。物語は完成された美しさがあり、統一された切なさが全てを包みこんでいる。

今回の物語の根底に流れるのは「切なさ」「哀愁」である。DODの「狂気」は強烈で、常に現れ続けるそれは物語を牽引するとともに徹底的に破壊していた。それに対して「切なさ」は物語全体に漂っているのは同じだ。ハズレ曲がない、といわれる超良質のサウンドがさりげない哀しさを引き立て、その世界に暮らす人々との会話はつねに切なさを伴い、少年編と青年編に分かれた物語は、悲しみ、つらい感動を伴う王道でありいわゆる「泣ける」ものだ。魔王率いるマモノの脅威に怯える人々、少しずつ荒んでいく街、人の死や狂気を内包するクエスト。暗い内容なのだが、それがしっかりと物語の中で「切なさ」の中に包み込まれていくため、表面上現れるのは唯一終盤のみだ。
 それが1周目のストーリー。1周目ラストで発覚する事実が、2周目で威力を発揮する。

<ここからネタバレ>























1周目ではなんとはなしに進めてきた部分が、実際は深刻な裏設定を持っていることが発覚するのだ。これにより物語はがらりと印象を変える。敵が実は人間だった、というよくある設定だけれども、そのありがちな設定がそれぞれのボスや物語ごとに丁寧に描かれているため、とても良い効果を出している。基本的にゲシュタルト側を人間であるととらえると普通はレプリカント側が悪いように見えてくるわけだが、別にレプリカント側が全て悪いのではなく、ゲシュタルト側にも非があったりするのがうまい。ゲシュタルト側のエゴが語られるシナリオもあり(狼や崖の村のエピソードなんかはその典型だろう)、あるいは微妙なすれ違いが狂気をもたらすロボット山のシナリオの様なものがあったり。丁寧に描くのでプレイヤー側にも考えさせるものだ。2週目であっても展開は全く同じ、マモノがニーアによって討伐されるという結末なので、ゲシュタルト側が頑張るシナリオはない。マルチエンディングではあるけれどCとD以外はみんな同じ世界での出来事と思われる。だがそれがいい。今回は並行世界的な概念をほとんど見せないことによって良い結果を出せていると思う。




















<ここまでねたばれ>
 DODは万人受けは絶対にしないが、合う人はとことん熱狂的なファンになってしまうコアなゲームだった。ニーアは万人受けはしないだろうし、熱狂的なファンを付けるほどのものではないかもしれない。その代り、近年のRPGでは稀な王道を地で行く正統さと、斜め上の方向に個性的なキャラクターたちによる漫才、そしてとくに最後のEDにみられるような丁寧かつ徹底した雰囲気作りが独特の世界観を作り出し、魅力的な作品となっている。まだ2010年度は始まったばかりだが間違いなく今年度最高レベルのARPGであることは間違いない。