白い林檎、硝子のスープ

読書・ゲームなどの感想を書いていくです

超弦領域 年刊日本SF傑作選

超弦領域 年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)

超弦領域 年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)


なんというか、意外に早く出ましたよね。


法月綸太郎「ノックス・マシン」>
 ノックスの十戒というミステリのルール集を基にタイムトラベルを絡めたおバカSF。そもそもの発想が面白く、オチはありきたりなのにまじめに議論するから楽しい。とてもバカミス的な構成をとっていて、なのに典型的なハードSF的お約束を外さない前半は素晴らしいと思う。だけどちょっと後半は微妙。好きではあるけど。

<林巧「エイミーの敗北」>
 集合的無意識が謎の男に敗れるだけの話だが、話の膨らませ方が上手い佳作。まあつまりは佳作どまりな気はする

樺山三英「ONE PIECES」>
 フランケンシュタインを題材とした現代怪異物。時間軸が混在して分かりづらいが変に幻想的な雰囲気を出している。面白いと言えば面白いんだけど、ちょっと自己満足的なところが鼻につくかもしれない。

<小林泰三「時空争奪」>
 『天体の回転について』掲載作。正直あの短編集ならもっといいのがあると思うが、発想の奇抜さとその処理の仕方には脱帽。実際、処理の仕方がすごく上手いので面白い。

津原泰水「土の枕」>
 短編としてはおそらくこの傑作選の中では一番。ありがちな入れ替わり物なのに語りが上手すぎる。なんだろう、このひとは全く知らなかったんだけど、すごく面白かった。

藤野可織「胡蝶蘭」>
 純文学寄りの作品で、淡々とした感じがいい。上手くまとまっていて、読者の想像を促す。個人的には好きだが、苦手な人はいるかもしれない。特に際立った個性はないけど、すごく胡蝶蘭を買いたいという欲求に駆られる良作。

岸本佐知子「分数アパート」>
 嘘日記。嘘、ですよね……。面白い。この人は味があっておお、と思う。

<石川美南「眠り課」>
 短歌。うん、短歌。短歌はさすがにどうなんよ、と思ったけど意外と良い。

最相葉月「幻の絵の先生」>
 星新一の評伝番外編、というよりむしろ星一すげーと思う話。すごい。でも、なんでこの短編集に入ってるの? まあ面白いけど。

Boichi「全てはマグロのためだった」>
 漫画枠で予想通りの掲載。だって面白いモノ。ギャグかと思わせておいて一気に壮大で感動的な話に終着する、というのが良い。個人的には「HOTEL」のが好きだけどあれは壮大すぎて作者の力量を上回ってるかも、確かに。

倉田英之「アキバ忍法帖」>
 山田風太郎をアレンジしたものらしいけど山田風太郎知らないからなぁ。まあひどいエロ枠ですね。ノリは好きだが挿絵が18禁?なのはふはははという感じ。

<堀晃「笑う闇」>
 answer songsからの収録。answer songsの作品は全部載せろといいたいが一つ選ぶとしてこれを選んだのは納得。ロボットSFとしても良質だし、なぜ、と思わせる物語展開が良い。いやあ、痛そうなんだよね、これ。お笑いいいなぁ。

小川一水「青い星まで飛んでいけ」>
 いい作品。壮大なストーリーが最後により壮大になって読者を圧倒する。確かにクラークっぽいと言えばそうかも。モノリスオマージュは素晴らしいと思う。良いなぁこういう宇宙SFまた読みたいなぁ。

円城塔「ムーンシャイン」 >
 なぜかまたもや未発表作品、というか書き下ろし。円城塔にしてはわかりやすい話。だがやはり馬鹿馬鹿しい話。面白い。何なんだろうこの人。理解できるとは思えないんだけど面白い面白い。カオス的なんだよね。

伊藤計劃From the Nothing, With Love」>
 007へのオマージュと意識についての短編。『虚構機関』の短編も面白かったけど、『ハーモニー』寄りのこっちはさらに面白い。個人的には毎回ある哲学臭い考察がすごく好き。ハーモニーの後半とか最高すぎた。それにしてもこの話も設定もよしネタもよし、すごい人だったと改めて思わされる。