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白い林檎、硝子のスープ

読書・ゲームなどの感想を書いていくです

ザ・ロード コーマック・マッカーシー

 作品のクオリティが非常に高い。
 荒廃した世界を旅する親子。ただ漠然と、旅をする親子が描写される。彼らは自分たちを「善き者」と何度もいう。まるで確認するかのように。実際この荒廃した世界において、彼らの何度も語る「善き者」は登場しない。あるいは登場したのかもしれないが、そのように描かれている人物は一人もいない。
 父親は子供を守るため、攻撃すらいとわない。略奪すらいとわない。しかし、純粋無垢な少年は嘆願する。助けてあげようよ、食べ物を分けてあげようよ、と。彼らが善き者である理由は「人を喰らわない」ということである。人が人を襲わなければ生きていけないほど荒廃したこの世界で、「人を喰らわない」ことは「死」とほぼ同義である。それでもなお、かれらは「善き者」であろうとする。死と戦いながら、南を目指す。何度も危機を逃れ、その度に父親は生きるため、守るためにほかの人々と戦う。脅す。それでも彼らは「善き者」なのか。荒廃した世界の中で、「善き者」としての行動とは何なのか。考えさせられる。
 作品世界の構築が恐ろしく上手く、多くを語らないことにより神話性を出す。誰ひとり名前は語られない。しかし妙なまでに現実感がある。巧みな文章力により、我々読者を悩ませて、作者は何をさせたかったのだろうか。

評価:4.5